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RSウイルス感染症

疫学

RSV感染症は世界中に存在し、地理的あるいは気候的な偏りはないが、特徴的なことは、いずれの地域においても幼弱な乳幼児でもっとも大きなインパクトがあることと、毎年特に都市部において流行を繰り返すことである。流行は通常急激な立ち上がりをみせ、2~5カ月間持続するが、温帯地域においては冬季にピークがあり、初春まで続く。本邦においても、11~1月にかけての流行が報告されている。RSVは乳幼児における肺炎の約50%、細気管支炎の50~90%を占めると報告されており、より年長の小児においても気管支炎の10~30%に関与していると考えられている。最初の一年間で50~70%以上の新生児が罹患し、3歳までにすべての小児が抗体を獲得する。肺炎や細気管支炎など のRSVによる下気道症状は、ほとんどの場合は3歳以下で、入院事例のピークは2~5カ月齢に あるが、最初の3~4週齢では比較的少ない。また、年長児や成人における再感染は普遍的に 見られるが、重症となることは少ない。RSVは環境中では比較的不安定ではあるものの、特に家族内では効率よく感染伝播することが知られており、乳幼児とより年長の小児のいる家族の場合には、流行期間中に家族の44%が感染したとする報告もある。概ね家族内に持ち込むのは、軽症の上気道炎症状を来した学童年齢の小児である。感染経路としては大きな呼吸器飛沫と、呼吸器からの分泌物に汚染された手指や物品を介した接触が主なものであり、特に濃厚接触を介して起こる。

 

臨床症状及び治療

RSVの初感染は常に顕性であるが、軽症の感冒様症状から重症の細気管支炎や肺炎などの下気道疾患に至るまで、様々である。しかしながら、初感染においては下気道疾患を起こす危険性は高く、69%の乳児が生後最初の一年間でRSVに罹患する。そのうちの1/3が下気道疾患を起こすと報告されている。初感染の病像として、上気道炎や気管支炎の場合でも症状は比較的強い。特に1歳以下では、中耳炎の合併がよくみられる。生後4週未満ではRSV感染の頻度は低いが、罹患した際には呼吸器症状を 欠く非定型な症状をとることが多く、診断の遅れにつながる。この年齢では、突然死につながる無呼吸が起きやすいことも報告されており、注意が必要である。  潜伏期は2~8日、典型的には4~6日とされているが、発熱、鼻汁などの上気道炎症状が数日 続き、その後下気道症状が出現してくる。発熱は初期症状として普通に見られるが、入院時に は38℃以下になるか、消失していることが多い。咳も主要な症状であるが、持続、増悪する咳 は下気道疾患への進展を示唆する。特に細気管支炎では喘鳴、陥没呼吸や呼吸困難がみられる。聴診上湿性、乾性ラ音が聞かれる。細気管支炎と肺炎の鑑別は必ずしも容易ではなく、またしばしば合併する。罹病期間は通常7~12日で、入院例では3~4日で改善してくるとされるが、ウイルスの排泄は持続し、ガス交換の異常も数週間続くと考えられている。RSVの再感染は普遍的に認められ、縦断的な調査では毎年6~83%の小児が再感染を経験していると報告されている。通常は軽症の上気道炎や気管支炎であるが、幼児では20~50%以上の症例で下気道疾患がみられる。成人ではいわゆる普通感冒を起こすのみであるが、特にRSVに感染した小児を看護する保護者や医療スタッフでは、気管支炎やインフルエンザ様症状をきたし、より重症になることがある。これは、初感染児より排出される大量のウイルスに暴露されるためと考えられている。
RSウイルス感染症の治療方針はその時々に出現している症状に合わせて治療していくことになります。 RSウイルス感染症の特徴的病像である細気管支炎や、気管支炎・肺炎などの場合には、・気道分泌物の除去(吸引や去痰剤の使用)、・脱水防止のための輸液(脱水状態では痰の粘稠度が増し、痰の排出が困難となり気道閉塞のリスクが高まります)、呼吸困難を緩和させる体位、痰の排出を促す胸部のタッピイング、加湿、酸素投与、気管支拡張作用を有するβ刺激剤の吸入を行います。 その他に二次的な細菌感染予防や、細菌感染合併の場合は、抗生剤の投与も行われることがありますが、RSウイルス自体に対しては抗生剤は効果はありません。(ウイルス感染症に対しては抗生剤は効果はありません。抗生剤は細菌=バイ菌に対して効果のある薬剤です

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